映画『ミスト』スティーヴン・キング原作
『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』のコンビ、原作スティーヴン・キングと監督フランク・ダラボンが描くパニック・ミステリー。
霧の中に潜む謎の生物に恐怖し、常軌を逸していく人々の姿を描きます。
混乱する人々をまとめようとする主人公を演じるのは、『パニッシャー』のトーマス・ジェーン。
『ポロック 2人だけのアトリエ』のマーシャ・ゲイ・ハーデンが、混乱をあおる狂信的な宗教信者の中年女を怪演しています。
思わず目を疑うような、驚がくのエンディングが必見です。
ラストを観た後の虚無感のようなものがすごいです。
なぜ原作とは違う結末になったのか考えてみました。
あらすじ
ガラス窓を破るほどの嵐の翌日、スーパーへ買い出しに出掛けたデヴィッド（トーマス・ジェーン）。
軍人やパトカーが慌ただしく街を往来し、あっという間に店の外は濃い霧に覆われた。
設備点検のために外に出た店員のジム（ウィリアム・サドラー）が不気味な物体に襲われると、店内の人々は次第に理性を失いはじめ……。
予告動画
キャスト紹介
- デヴィッド・ドレイトン（トーマス・ジェーン）
- アマンダ・ダンフリー（ ローリー・ホールデン）
- ビリー・ドレイトン（ネイサン・ギャンブル）
- オリー・ウィークス（トビー・ジョーンズ）
- ミセス・カーモディ（マーシャ・ゲイ・ハーデン）
- ジム・グロンディン（ウィリアム・サドラー）
- ブレント・ノートン（アンドレ・ブラウアー）
- ダン・ミラー（ジェフリー・デマン）
- アイリーン・レプラー（フランシス・スターンハーゲン）
- バド・ブラウン（ ロバート・トレヴァイラー）
- サリー（アレクサ・ダヴァロス）
- ウェイン・ジェサップ（サム・ウィットワー）
- アンブローズ・コーネル（バック・テイラー）
- マイロン（デヴィッド・ジェンセン）
- ノーム（クリス・オーウェン）
- バイカー（ブライアン・リビー）
- 家に子供を残してきた女性（メリッサ・マクブライド）
- ハティ（スーザン・ワトキンス）
- ステファニー・ドレイトン（ケリー・コリンズ・リンツ）
主人公の画家。
息子ビリーとスーパーマーケットに買い物に行った際に怪物たちの襲撃に巻き込まれてしまう。
最近町に越してきた新任の女教師。
レイトン家とも顔馴染みでビリーの面倒を見てくれている。
デヴィッドの8歳の息子。
スーパーマーケットの副店長。
特技は射撃。
デヴィッドの理解者。
狂信的なキリスト教信者の中年女性。
状況の混乱に相応して徐々に信者を増やしていく。
機械工の作業員。
ミセス・カーモディの信者になる。
ドレイトン家の隣に住む著名な弁護士。
何人か仲間を連れて外へ助けを呼びに出て行ってしまう。
序盤に霧の中にいる何かに襲われ、鼻血を出しながらスーパーに逃げてきた年配の男性。
デヴィッド側に同調。
ビリーが通う小学校で教師をしている白髪の老女。
同じくデヴィッドらに同調。
スーパーマーケットの店長。
デヴィッドから怪物の話を聞いた時は嘲笑っていた。
スーパーの若い女店員。
ジェサップの恋人。
休暇中の軍人。
階級は二等兵。
髭が特徴的な老男。
機械工の作業員でジムの同僚。デヴィッドたちとシャッターを確認しに行った一人。
スーパーの若い店員。デヴィッドの言葉を聞かずに、外の機械を調べにシャッターを開けてしまい、生物の触手に捕まり霧の中に引きずり込まれる。
バンダナを巻いた初老男性。ノートンが外へ出るタイミングでアンブローズの車に置いてある銃を取りに出て行く。
店が霧に覆われた直後、二人の子供が待つ自宅まで車で送ってくれる人を探すが誰も呼応せず、皆が止めるなか一人で店を出て行く。
レプラーの友人でビリーの世話をしてくれる短髪の初老女性。
デヴィッドの妻でビリーの母。家で留守番をしている。しかし、そこまできていた生物によりサツ害される。
映画考察※ネタバレ注意
霧が発生した理由
町が深い霧に覆われはじめたのは激しい台風が去った後のこと。
湖のほとりに建てた小屋が壊れてしまうほどの強風と雨嵐。
嵐がやみ、人々はこれからのことに備え、スーパーに食料に調達に向かいます。
スーパーに向かう道でたくさんの軍隊の車やレスキューの車を目にしますが、台風の影響であまり不思議に思うことはありません。
しかし、直後、町は霧に覆われます。
すぐ先も見えないほどの深い霧は昨晩の台風の影響だと人々は思いますが、実はそうではなく、恐ろしい事態の始まりになりました。
怪物の正体
血まみれの男性がスーパーマーケットに入ってきたことで、霧の中に「何かがいる」ということをみんなが知ることになりますが、まだ半信半疑。
有志をつどい、店の裏口から様子をうかがった若い店員をタコのような足を持つなにかに引きずられ食べられてしまいます。
それを見たデヴィッドたちはただならぬ事が起きていることを知ることに。
あの怪物はなんなのか。。。
夜になり、コウモリような大きな鳥のようなものや、まるで蚊のような昆虫が店を襲う。
得体の知れないものならいざ知らず、知っている生き物が強大化して人を襲う。
むちゃくちゃに怖い。
しかもコウモリや蚊には明らかに「血を吸うやん」な口。
怪物に恋人サリーをコロされてしまった若き軍人ウェイン・ジェサップから語られた事実に店内は凍り付きます。
それは・・・
軍隊が実験していた遺伝子操作された生物たちだった。
あり得なさそうであり得る設定が見事なところです。
宗教による分裂
アメリカ映画の「あるある」というか、映画に関係なく「あるある」なのであろう、終末論者の登場。
熱心な宗教家ほど騒ぎ立て、まさに自分が伝達者のようにふるまい始めます。
もちろん、この異常な状態にそう思わないのもわからなくはないけれど、私がこの場にいてもミセス・カーモディに賛同はしないと思う。
日本人にあまりこの感覚がない気がするのですが、どうでしょうか？
意見の対立ではなく、「神」を盾に正当化や正義をおしつけられるのは嫌だなぁ。
そしてこういう人たちの強みは自分たちが正しいと心から思っていること。
こちらの意見なんて通らないし、ましてや変人扱いしてくるから、たちが悪い。
そして追いやられてしまう主人公たちは少数派。
小さなグループから、さらにグループができる。
こうやって無駄な混乱を招いていくのがパニック映画ならでは。
でもきっと現実にも起こりうることなんだと思う。
恐怖をあおったもの
「霧/ミスト」の効果が一番大きかったですね。
まず、当面の食料の問題やトイレの問題はなかったのですが、「いつ出られるのか？」わからないこと。
すぐ前も見えないほどの霧で外の状況が全く見えないことが恐怖をあおられる結果に。
なのに、チラチラと怪物の気配だけは感じ取れる。
夜の暗い時間帯に襲ってくる怪物。
目に見える確かなものがないことは人間の恐怖をあおるには一番効果的だと思います。
そして内部で起きる分裂。
普通の精神状態では耐えられなくなるのも当然です。
ましてや幼い息子を守らなければならない父親の立場なら、投げやりになることもできない。
ぎりぎりの狭間で正常な思考と的確な判断を求められるのは精神的にとてもきつい状況ですね。
最初に逃げた女性が助かった理由
スーパーマーケットが霧で覆われた直後、ある一人の女性が「いえに子供だけで留守番をしている。」とみんなの制止を振り切り外に出て行ってしまいます。
そのあとに現れた怪物の登場により、全員がこの女性も餌食になっただろうと考えるはず。
ですが、ラストシーンでこの女性が再び軍隊のトラックに乗り救助されている姿が登場します。
女性が助かったのは霧が出始めた直後だったことが大きかったと思います。
軍の施設から逃げ出した怪物たちがまだ、町まできていなかったのでは？
そう考えるといち早く外に出た女性が助かったことが納得いきます。
原作との違い
このままでは埒が明かないと考えたデヴィッド・ドレイトン達は駐車場に止めた車に乗り込み、逃げ出すことを決意します。
デヴィッドは息子のビリーから「僕をあの怪物にコロさせないで。」と頼まれていました。
車にたどり着くまでに何人もの犠牲者が出ます。
そして車に乗り込めたのはデヴィッド親子を含め5人。
いつまでもつかわからないガソリンを頼りに車を走らせ、まずはデヴィッドの自宅に到着しましたが、そこで見たのは怪物に襲われたであろう妻の姿。
そこでデヴィッドは絶望的な気持ちになります。
そして、とうとうガソリン切れに・・・。
実はほとんどが原作通り忠実に映画かれた映画ですが、じつは原作はここで終わっています。
この後の映画史上まれにみるバッドエンドにつながる部分は映画ならではのものになっています。
ぜひ、映画を観て確認してみてください。
感想ツイート
「かくあるものだと思い知らされる。」と言われています。
#ミスト
レビュー:★★★★★凄まじい力を持つ映画だ。
先の見えない異常な状況下、何を信じるべきかを問いかけ、それを根底から揺さぶり、逆説的に希望を持って生きる必要性を訴える。納得の対立からの醜悪な争いと、武器を使うことの功罪。
人間とはまさに、かくあるものだと思い知らされる。 pic.twitter.com/SZnsStFxIg— GA-ZEN (@zen_ga) April 14, 2022
「すぐに分断してしまうという良い例え。」と言われています。
この映画は、まるで今の世界情勢の流れ方に似てる…
大衆というものは、恐怖や異常事態時には、いとも簡単にマインドコントロールされ、すぐに分断してしまうという良い例え。まさに今…お気付きだろうか？#NoWar pic.twitter.com/Qt5OFbq9pO
— ほまれリンゴ🍎 (@HomareApple) April 13, 2022
「ガチで凄い作品やからみんなも見て見て」と言われています。
ミストって映画ガチで凄い作品やからみんなも見て見て( ‘-^ )b
— キノฅ (@yo_kan1484) April 9, 2022
感想まとめ
この映画を観たときはとにかく衝撃でした。
あまり日本では話題にならなかったように思うのですが、よくできているし、想像を超えてきたクライマックスが頭にこびりつきます。
ホラー映画にハッピーエンドは多くはないのですが、その中でも群を抜いてバッドエンド。
これからこの主人公はどうやって生きていくのだろうと考えずにはいられません。
もう少し待つことはできなかったのか？
そんなに急がなきゃいけなかったのか？
あのままスーパーマーケットにいたら助かった？
いろんな想像が駆け巡りますが、それはもうあとの祭り。
映画自体は面白いのに、とにかく後味は最悪。
なんだろう。
そういう気分の時に観てみるのはいいかもしれません。
もしくは気にならない人にはお勧めです。
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