岩井志麻子先生のデビュー作「ぼっけえきょうてえ」を紹介

表題から不思議なこわさを感じます。

岡山弁で「とてもこわい」という言葉です。

お化けや幽霊がでるというわかりやすいホラーではなく本当のこわさとはなにかがわかるととてもぞっとする話の短編集です。

「ぼっけえきょうてえ」のネタバレと感想、映像化の情報や最新刊情報も紹介します。

ぼっけえ、きょうてえを書いた経緯

あるラジオでこの作品を書くに至った経緯を話しておられました。

当時22歳だった岩井志麻子先生。

今ではヒョウの格好をしてテレビでは面白い人と思われがちですよね。

ヒョウの格好が気に入っている経緯は有吉反省会に出演時の禊によるものです。

当時はとても大変な精神状態だったそうです。

結婚し、２児をもうけた著者はある日突然、旦那さんから「長年付き合っている人がいるから別れてほしい。」と言われたそうです。

その言葉を聞いた著者は「は？」と思ったそう。そりゃそうですよね。

そしてその渦中に小説を強く書きたいという気持ちが出てきます。

その時に目に留まったのが某出版社の日本ホラー小説コンテストへの応募募集のポスターでした。

旦那さんと離婚する、しないでもめている最中のうらみや悲しみというどうしようもない感情にどっぷりとつかっていた当時に書き上げ、この作品で賞をとったら「離婚しよう。」と決めたそうです。

そしてちょうどもめているときに電話が入り「大賞を受賞した。」と告げられ、それを聞いてすぐにハンドバッグと散弾銃をもち東京へと上京したと言われていました。

岩井志麻子先生の人柄のわかるおすすめYouTubeはこちら

事故物件住みます芸人の松原タニシが「恐怖」をテーマに各界で活躍する著名人と対談する番組。

今夜の対談相手は・・・作家の岩井志麻子さんです。

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ぼっけえ、きょうてえあらすじ

ぼっけえ、きょうてえは表題を含めたオムニバス形式の小説です。

本の表紙には甲斐庄楠音の「横櫛」が使用されています。

ぼっけえ、きょうてえ」

岡山の遊郭で働く女郎が視点で客に身の上話をしています。

女郎は岡山の貧困の絶えない村で生まれ、母親は間引き専業の産婆をしていました。

四歳の頃から母親の仕事の手伝い、女郎にとってそれは日常のこと。

間引きとはいまでいう「中絶」を意味しています。

そして、怖しい身の上話はこれだけではありません。

女郎は双子で自分自身も間引かれた赤子だったのですが、女郎だけが二日に渡って生き残ったことで生かされることになったと語ります。

父親から受けた地獄のような仕打ち。

興味津々だった客もだんだんと気味悪くなってきますが、女郎の本当に怖ろしい話はこれからでした。

密告函

岡山県でコレラが流行していた当時、村役場はコレラを隠す人が増えてきたことで密告函を設置。

密告者の名前が知れ渡れば村八分もあり得る状況だったがゆえの手段です。

役場に勤める片山弘三は密告函の責任者を任されていて、『祈祷師の娘・お咲』の名前がいくつも投書されていることから調査に乗り出します。

お咲は身持ちが軽いことで近所では噂が後を絶たない女でした。

自分はそんな甘い言葉には騙されないと気を引き締める弘三でしたが、弘三は一目でお咲に惹かれ、自分の財産をお咲に貢いでしまいます。

弘三は妻・トミの様子が変わらないことからうまくやっているように思えていました。

しかし、すぐにそれが大きな勘違いだったことを思い知らされ・・・。

あまぞわい

潮が引いた時にだけ顔を出す浅瀬や岩礁のことを『そわい』といい、長浜村と竹内島の間にある「そわい」だけは区別して『あまぞわい』と呼ばれていました。

この島ではいい△に方をしなかった人間がそこに居着くと言われています。

ユミという女が『あまぞわい』とどう関係してくるのかが語られます・・・。

依って件の如し

シズと一回り上の利吉は両親を亡くし、両親をよく思っていなかった村人から遠ざけられていました。

利吉はシズを養うため自ら志願して戦争に赴きます。

残されたシズは住み込み先で馬小屋をあてがわれ、ひどい扱いを受けますが、牛と心を通わせ言葉を上手に話せるようになりました。

数年が経ち、家に鎌を持った賊が侵入し、一家を惨〇。

そこでも生き残ったシズは戦争から戻ってきた利吉と再会します。

事件は結局、何の手がかりもなく犯人も分かりませんでしたが、シズはやがて真実に気が付きます。

事件の犯人、そして利吉の正体について・・・。

ぼっけえ、きょうてえの映像化

2006年、「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズのひとつとして三池崇史監督で映像化されました。

脚本は天願大介が担当。

原作者の岩井志麻子も女優として出演しています。

ケーブルテレビ用に制作されましたが、アメリカではその残酷さ故に放送中止となってしまったほどです。

日本では『インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜』の題名でシアターイメージフォーラムでレイトショー公開されました。

テレビではWOWOWで「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズ（第1シーズン）として放映されています。

インプリント～ぼっけえ、きょうてえあらすじ

アメリカ人の新聞記者であるクリストファーは、「女郎と馬しかいない」という島を訪れ、そこで小桃という女郎に出会い、彼女と結婚の約束をして別れます。

小桃はけなげに体を売りながら、クリスが迎えに来てくれるのを待っていました。

だが再度身辺の整理をつけた後、小桃を迎えに島を訪れたクリストファーは、「小桃という女郎を探している」と遣り手婆に尋ねても「そんな女郎は知らない」と言われてしまうのです。

いくつかの廓を訪れ、疲れ切ったクリストファーは、とある遊郭で別の女郎と一夜を共に。

その女郎は顔の半分が引き攣れ、とても醜い外見をしていました。

抱かないのかと聞く女郎に、クリストファーは「今晩はそのつもりはない、寝物語にお前の話を聞かせてくれ」と頼みました。
そして女郎は話し始めるのです。

それは女郎自身の生い立ちと、小桃は盗みをはたらき、拷問にかけられた末に自〇したという内容でした。

クリストファーは「小桃が自〇するはずがない」と言いますが・・・。

「真実をしりたいというのはよくないことだ」と言う女郎の話はだんだんと様子が変わっていきます。

そして小桃は女郎が〇した・・・と語ります。

理由を問い詰めるクリストファーに女郎は本当の“真実”を語り出しました。

それは、女郎の両親は実の兄妹だったということ。

自分は奇形児で産まれた後すぐ捨てられたが2日も川で生き延びていたこと。

小桃を〇したのは「天国へいかせるため」自分の意思で行ったこと、という理解しがたい内容だったのです・・・。

感想まとめ

岩井志麻子先生は目を閉じたら消える幽霊よりも目を閉じても消えない人間の方が怖いと語っているのを聞いたことがあります。

まさにそのことが描かれている短編集ですよね。

日本ホラー小説大賞を受賞するのは納得の作品です。

この作品は2002年に出版されていますが、密告者などはコロナ渦においてありえそうな作品でぞっとしますね。

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