小林泰三著「玩具修理者」ネタバレと感想|日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品

玩具修理者 ホラー小説

第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した作品、小林泰三著「玩具修理者」

私がこの本に出会ったのは漫才コンビの金属バットのラジオで小説好きの小林圭介さんが「面白かった」と言われていたからです。

金属バットが大好きなので、面白いと言っているんだから間違いないだろうと迷わず購入。

読み始めると世界観に引き込まれ、その場所の光景が容易に想像できるような描写のうまさにあっという間に読んでしまいました。

ページが進むごとに終わってしまうーと残念な気持ちが芽生えてしまうほど面白かったです。

玩具修理者には2つのお話が載っています。

二つ目は「酔歩する男」でSFのようなお話です。

じつは私はSFはあまり得意ではありません。

知らない単語が多く出てくるSFはどうも読むのが進まないことが多くて。

このお話はSFであるのだけど、そこまでSF色が強くなかったので読みやすかったです。

玩具修理者は短編のお話ですが、酔歩する男は少し長めのお話でした。

1冊のほとんどが2話目の話だったので、中短編とでもいうのかな?

独特な世界観なのでぜひ読んでもらいたい一冊です。

”玩具修理者”


スポンサーリンク

作者プロフィール

小林泰三

小林泰三(こばやしやすみ)
1962年8月7日-2020年11月23日(がんのため大阪府内の病院で亡くなりました。)58歳でした。
1995年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞して作家デビュー。
緻密な論理とグロテスクな描写を特徴とするSF・ホラー短編が得意。
近著に『セピア色の凄惨』『完全・犯罪』『天獄と地国』『人造救世主』などがあります。

「玩具修理者」あらすじ

どんなに壊れた玩具でも、その玩具修理者は直してくれた。

“私”は誤って△なせてしまった弟を彼のところに連れていった。

弟は生き返った……が。

生と△を語る奇妙な“修理者”が誘う幻想の世界。

「玩具修理者」収録作品とネタバレ

玩具修理者表紙

玩具修理者

女性と喫茶店で話している「わたし」。

女性は昼夜問わずいつでもサングラスをかけています。

その理由は彼女が七、八歳よりも幼い頃にあった事故が関係しているようでした。

女性が幼いころ、女性の家の近所に「玩具修理者」と呼ばれる人がいました。

年齢、性別、国籍など全てが謎に包まれていて、壊れたおもちゃを持ち込めばどんなに壊れていてもきちんと修してくれるのです。

女性は夏のある日、弟の道雄をおんぶして歩いていると、歩道橋で足を踏み外し弟を背負ったまま階段から落ちてしまいました。

赤ちゃんだった道雄は△んでしまい、女性も大けがを負ってしまいます。

女性は大けがの痛みも忘れ、道雄を△なせてしまったことで両親から怒られることが怖くて考えました。

そしてあの玩具修理者なら治せるのではないかと思い当たります。

△んでしまった道雄を背負い、真夏の炎天下の中、女性は玩具修理者を尋ねます。

道雄を元に戻してほしいという依頼を玩具修理者は黙って請負いました。

そして黙々と道雄を分解し始めます。

骨から肉をそぎ落とし、細かく分解されていく道雄。

玩具修理者はそれと同時にコンピューターも分解し始めます。

無事に元通りになった道雄。

女性は道雄を連れて家に帰りました。

しかし道雄は赤ちゃんのまま成長することはありませんでした。

おかしいと思った母親は道雄を病院に連れていきます。

病院で調べると道雄の体の中にコンピューターの部品が埋め込まれていました。

道雄はその部品のおかげで生きていたのです。

女性は道雄を元に戻してほしいと依頼し、成長するようには頼まなかったので玩具修理者は頼まれたとおりに元に戻しただけだったからでした。

女性はトラブルが起きるたびに道雄を玩具修理者のところへ連れていき、治し続けてもらいました。

話を聞いていた「わたし」は女性がサングラスをしている理由を尋ねます。

女性は静かに話を続け、歩道橋から落ちたとき、女性は頭の1/4がつぶれてしまっていたことを知ることに。

そしてそれも玩具修理者に治してもらいました。

女性が子供の足で弟を背負いながら玩具修理者のところにたどり着くまで長い時間を要したのです。

そのため目が腐って使えなくなっていたので、玩具修理者はその目の代わりに猫の目を使ったため、昼間はまぶしくて瞳孔が閉じてしまうからだと教えてくれました。

「わたし」は女性に尋ねます。

「姉さんはいったい何者なんだ…。」

玩具修理者表紙

酔歩する男

血沼荘士(ちぬそうじ)は飲み会の帰り道、見知らぬ男から声を掛けられました。

男・小竹田丈夫(しのだたけお)は血沼の大学時代の親友だといいますが、血沼にはまったく記憶にありません。

小竹田は血沼のプライベートなことまで言い当てるので、信じざるを得ませんでした。

血沼は気味が悪くなって説明を求めると、小竹田は大学時代の血沼との思い出を語り始めます。

二人は同じ大学の同じ学科に入学し、すぐに親友になりました。

四年生の時、二人は同じ研究室に配属され、そこで同級生の菟原手児奈(うないてこな)と出会います。

小竹田はすぐに惹かれ二人は付き合い始めますが、小竹田の嫉妬が激しく手児奈が逃げるようにして別れを迎えてしまいます。

そしてそのあと手児奈は血沼と付き合い始めます。

そのことを知った小竹田は嫉妬し、手児奈はどっちのことが好きか決着をつけようとします。

小竹田の異様な嫉妬心と血沼への想いの間に挟まれた手児奈は駅のホームから飛び降りて自〇しました。

血沼は手児奈が自〇したのは小竹田が追い詰めたからだと責めます。

血沼は小竹田に償いとして、一緒に医学部への編入試験を受けるよういいました。

結果、小竹田だけが医学部に受かり、編入試験に落ちた血沼は同じ学部で研究を続けることに。

血沼の目的は残された手児奈の遺伝子から彼女を蘇らせることでした。

さすがの小竹田も目的の恐ろしさに驚きましたが、従うしかありません。

二人はそれぞれの道を進みますが、小竹田は手児奈をよみがえらせることには協力せず普通の人生を歩んでいました。

そして三十年が経ち、再び現れた血沼はまだ手児奈のことを諦めていませんでした。

血沼は時間を逆行させることで手児奈の△んでいない時間まで戻ることを考えついていたのです。

時間の流れとは意識の流れであり、それを司る脳の一部を破壊すれば、時間の流れから解放されると考えました。

血沼は小竹田に機械の操作をさせて自分の脳を処置しますが、時間の流れから解放されることはありません。

諦めきれない血沼は小竹田にも同様の処置を実施。

こちらも失敗に終わったように思えましたが、翌日、小竹田は目を覚ますと一か月以上先の世界にいました。

しかし小竹田の時間移動は思った場所へ行くわけではありませんでした。

無意識のうちにどこかへ飛び、そして記憶もなくなっているので「線」で結びつくことはなくすべては「点」でしかありませんでした。

小竹田自身、どこの時代に行き、なにをしたか全く覚えていないので、過去がどのように変わったのかもわからないまま。

なので、時間移動を止める術すら思いつかないのです。

反面、血沼に至っては順調に生活しているように見えます。

現在の血沼の妻は・・・あの手児奈なのです・・・。

感想のツイートで

ハマりそうです。と言われています。

面白いんだよな酔歩する男と言われています。

最後のオチがとにかく良かった。と言われています。

感想まとめ

とにかく描写がリアルで怖かったです。

そしてオチのすばらしさ。

2作品ともオチでゾッとしました。

玩具修理者はさすがというか誰が読んでもわかりやすく怖い。

そして話の作りと描写の怖さがすごいと思いました。

私の知識不足でこの本を知らなかったのですが、調べてみて日本ホラー小説大賞短編賞を受賞していると知り納得。

50ページほどの短い話なのですが、作りこみ感が半端なかったです。

酔歩する男はSFを得意としない私には少し難解でした。

こちらは150ページ以上あり、表題作の3倍以上の長さの話です。

現在や過去に行き、波動関数が発散してしまう?というもうこのあたりで難しかった!

ですが、最後のオチや終わりが見えない恐怖にはやはりゾッとしました。

とにかく小林泰三という作家はすごいという印象です。

他にもたくさんの作品があるので、ぜひ読んでもらいたいほどのお勧め。

最近、亡くなったことを知りとても残念です。

■イーブックジャパンより最新情報をお届けします■

【eBookJapan】はマンガのタイトル数は日本最大級、業界最高画質を誇るブックリーダーで
快適に読書ができる電子書籍のダウンロード販売サイトです。

毎週100タイトル以上の新刊をリリース!

購入した書籍は、50冊まで無料の「トランクルーム」サービスを併用すれば、
PCの買い替えやクラッシュの心配をすることなく、WEB上の本棚に安心して蔵書できます。

iPhone/iPod touchにも対応。
PCで購入した書籍を、トランクルームを介してiPhone/iPod touchにダウンロードして
お楽しみいただけます。


関連記事

中島らも「こどもの一生」ネタバレと感想

「ぼっけえ、きょうてえ」ネタバレと感想

漫画「富江」ネタバレと感想



タイトルとURLをコピーしました