小説『バイバイ、ブラックバード』考察

伊坂幸太郎作品の中で一番好きな作品です。
しかし、謎の多い作品でもあるので自分なりの考察をまとめてみました。
2021年には新装版も発売されているみたいで、まだまだ人気がある作品だと再認識できました。
映画化もきになるところでしたが、ドラマ化されてたようなので、そちらの情報も。
何度読んでも新たな発見がある面白い小説です。
すんなり言葉が心にしみるので、読みやすいのでおすすめです。

あらすじ

星野一彦の最後の願いは、何者かに〈あのバス〉で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。
そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気「上品」──
これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。
ふたりのなんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー。

登場人物

星野一彦

借金のために〈あのバス〉に乗ることになった主人公

繭美

星野一彦を監視する大女

廣瀬あかり

既婚者と別れ、一人訪れたいちご狩りで星野一彦と出会う。
最初に別れを告げに行く女性

霜月りさ子

6歳の息子を一人で育てるシングルマザー

如月ユミ

ロープをこよなく愛し、侵入に憧れている

神田那美子

数字を日本語に翻訳する癖がある

有須睦子

美人の大物女優

考察※ネタバレ注意

5人の女性と交際していた星野一彦。
その女性たちと別れを告げに行くことになるのですが、その理由も不可解。

星野一彦が5人の女性と交際したのはなぜ？
なぜか憎めない星野一彦
星野一彦の生い立ちは？
繭美は何者？
あのバスに乗せられる理由は？
謎の組織とあのバスと結末

これらについて自分なりの考察をまとめてみました。

星野一彦が5人の女性と交際したのはなぜ？

星野ちゃん（繭美からこう呼ばれる）が自信を語っているのを聞く限りでは女性好きが高じてというわけではなさそうです。
たまたま出会って、意気投合して、いつの間にか5人になった。という感じ。
全員が同じ時期から交際に至ったわけではなく、現時点で5人だっただけで、それよりも少ない時も多い時も？あったと思われます。
そして、別れを告げに行った女性全員が星野ちゃんに他に女性がいたとは思っていないところがすごい。
会う頻度も様々で、どの女性ともドロドロした感じはなくあっさりしています。
これは伊坂作品に共通する部分だと思うのですが、星野ちゃんの人徳だともいえるのかもしれません。

なぜか憎めない星野一彦

5人の女性と同時に交際するような女の敵とも思えるような星野ちゃんですが、全体を通して好意すら抱いてしまう不思議。
作者の意図とは違うかもしれませんが、私の考察では女性たちの反応がそう思わせてくれるのではないかと感じました。
5人とも、いきなり現れた大女「繭美」と結婚すると宣言しても、悲しそうにはするものの怒ったりなじったりするどころか、星野ちゃんの幸せまでを願うのです。
まさかほかに4人もいるとは知らないとはいえ、お付き合いが楽しかったという点が共通しているのだと思います。
星野ちゃんのすごいところは、誰が一番好き、とかもないところ。
どの女性にも素晴らしい部分があって、どの女性も好きだという星野ちゃん。
そのあまりにもピュアな感じが女性にも伝わっていて、好感にすらなってしまう部分なのではないかと思いました。

星野一彦の生い立ち

いきなり5人の女性に別れを告げに行くことになった理由は「繭美」と結婚するというのは建前で、実は〈あのバス〉に乗せられるから。
〈あのバス〉に乗る前に5人に会いに行った理由は生い立ちに理由があります。
星野ちゃんは小さいころ、母親を事故で亡くしているのです。
いきなり、何の前触れもなく相手が消えてしまう悲しさを身をもって知っているから。
何度も出てくる言葉なので、よほどのトラウマのようになっているのだと思います。
しかし、ここでふと疑問を持ちました。
作中には一度も「父親」は出てこないのです。
小さなころに母親を亡くし、どのように育てられたのかのその後は一切語られません。
しかし、星野ちゃんの純粋さは苦労して育ったという印象は受けないので、誰かしらの愛情を受けて育ってきたと思います。
「父親」が出てこないことで母子家庭だったのでは？という感じもしますが、私の考察では星野ちゃん以外の男性の連想をなくす意図があったのではないかと思います。
ここで「父親」がでてくると5股している星野ちゃん像がぶれてしまう気がします。

繭美は何者？

身長2m、体重200kg、しかも金髪ハーフ。
Twitterなどではマツコ・デラックスを想像した人が多いみたいです。
星野ちゃんは真由美を例えるとき、往年のプロレスラー「アブドーラ・ザ・ブッチャー」のようだとたとえられています。
しかし、本物のブッチャーは186cm、156kgと言われているので、さらに一回り大きいですね。
繭美は〈あのバス〉に星野ちゃんを乗せるために監視しているので、謎の組織の末端部員ではないかと推察できます。
星野ちゃんと行動を共にする過程で、繭美が自身の生い立ちを語る部分があるのですが、その話があまりにも心がえぐられるので深堀りはありません。
いつも飄々と態度のでかい繭美。
しかもめちゃくちゃ機敏に動けて強いのに、組織に所属していることを考えると、サラっと語った少女だった繭美の過去の話は本当だと思わざるを得ません。

ゆめちゃん

だんだんと親近感がでてくるだけに過去が悲しすぎて泣ける

あのバスに乗せられる理由は？

5人の女性から愛され、別れを告げてもなお嫌われることのない星野ちゃん。
そんな人徳者がなぜ〈あのバス〉に乗ることになったのか。
理由は「借金」。
ですが、交際の様子など星野ちゃんの言動からギャンブル癖や浪費家とも思えないのになぜ？
そう思っていた矢先に、「借金を背負わされた。」という言葉が出てきます。
まっすぐでピュアな星野ちゃんは誰かのために借金を背負うことになったのだと思うと納得です。
しかも、それ以上に知らないどこかの恐ろしい人物を怒らせてしまったことが原因というところが、いかにも星野ちゃんらしい。

謎の組織とあのバスと結末

繭美がいうには〈あのバス〉の行き先は乗ったものしかわからない。
しかも、行きは人間が何人乗っていても、帰りに人間は乗っていない。
というか、人間と呼べるものではなくなっているという恐ろしさ。
それも、全部が謎の組織、上層部の気まぐれや面白さで決められるという未知の世界。
繭美も詳しくはわからない様子ですが、謎の組織は「面白こと」が好きなようで、〈あのバス〉に乗る前に5人の女性と別れを告げたいという星野ちゃんの願いを聞き入れたほど。
星野ちゃんの人柄に好感を持つようになった繭美は星野ちゃんの5人の女性たちをうまく利用して「面白いことをする」と上層部に提案してみてはどうか、と助言しますが、星野ちゃんは断ります。
そこがまた、星野ちゃんですよね。
女性たちを危険な目に合わすようなことはしたくないと断る星野ちゃんを〈あのバス〉から救うことはできるのか。
そこは読者の想像に任して、終わるところもよかったです

ゆめちゃん

私の結末はハッピーエンドにしておきたいです。
でも、そうすると・・・逃げ延びれる？とも思えて複雑。

『バイバイ、ブラックバード』原曲

バイバイ、ブラックバードVでタイトルの所以となった歌を有栖睦子のマネージャー佐野が口ずさみます。
ブラックバードを日本語にすると、「不吉なもの不運なもの」を指すというみたいです。

ドラマ情報

数々の伊坂幸太郎作品は映画化されているので、こんな面白い本なのに映画化されてないのかな？と思い調べてみました。
すると、やっぱりありましたね。
しかもドラマ！
章ごとに1話づつ作られていてうれしい限りです。
HULU、U-NEXT、TELASA、 paravi、FODと配信媒体が多いということは人気作品だということがわかりますね。

キャストは以下のとおりです。

星野一彦（高良健吾）
繭美（城田優
廣瀬あかり（石橋杏奈）
霜月りさ子（板谷由夏）
如月ユミ（前田敦子）
神田那美子（臼田あさ美）
有須睦子（関めぐみ）

ドラマ一覧はこんな感じ

ドラマDVDリリース宣伝動画

感想ツイート

「「バイバイ、ブラックバード」が一番好きです。」と言われています。

伊坂幸太郎さんの「AX (アックス ) 」読み終わりました。
かなり面白かったです。
伊坂幸太郎さんの作品は、だいたい読んでいるのですが、ベスト3に入る面白さでした。
個人的な好みでは、「バイバイ、ブラックバード」が一番好きです。
— ぴの (@rainbowandstar) April 6, 2022

「寂しい夜にぴったりの作品です。」と言われています。

『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎
寂しい夜にぴったりの作品です。時に、自分を必要として欲しい、と心の何処かで、思う事があると思います。さ逆手に取ったのが、本作の主人公、星野くんと思います。損得無しに相手を想って行動した方が素敵で良いなと思います。#読了 #読書好きと繋がりたい pic.twitter.com/GegWri2lty
— 詩織の栞 (@365bookwiths) September 4, 2018

「最終話まで一気見しました」と言われています。

戸塚様が出演してると知り
Paraviで
「バイバイ、ブラックバード」を
1話から最終話まで一気見しました💗
WOWOWのドラマすごい⤴️⤴️#戸塚祥太 https://t.co/l1MqnATPZF
— ひーたけ (@J3CmLahw1Wwv2AZ) March 30, 2022

感想まとめ

私は物語の結末を「読者の想像にお任せします。」という感じに終わらせる小説はあまり好きではありません。
でも、バイバイ、ブラックバードでは、これがよかったです。
なにより、いい予感しかしないから。
のぞむハッピーエンドにつながる伏線しかないからかもしれません。
でも、真実はわからない。
救ったところで、そのあとどうするの？ってなると、下手に物語の結末を決めてしまうより、この方がいいのだと感じました。
とにかく、登場人物がとても魅力的で、ほろっと涙が流れるところもあります。
とてもいい作品で、私は大好きです。

新装版購入紹介

2021年02月10日に新しい表紙の新装版が発売されています。

初版の発刊が2013年03月14日なので8年ぶりに新装されたことになりますね。
前のブルーの表紙とは打って変わってスタイリッシュな表紙になって5人の女性が海辺でたたずむ情景が素敵です。
単行本も新装され、当初の文庫本に似ていますが、白が基調でこちらもさわやか。

何年たっても色あせない伊坂作品は新装版でも好調な売れ行きの様子。
ぜひぜひ購入してみてください。

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