小説『小さな幸福』角田光代著|何気ない日常を紡ぎだす12の恋模様

小さな幸福 小説

小説『小さな幸福/All Small Things』角田光代著

『対岸の彼女』『八日目の蝉』の著者、角田光代が紡ぎだす12の恋模様。

この小説のほとんどが2、3ページで終わるショート・ショート並みの短編集です。

珠玉に紡いでいく恋模様。

子供から年配の恋まで描かれています。

誰にだって、恋の思い出はある。

自分の中で秘めている恋。

恋人同士の思い出。

短い物語のはずなのに、角田光代先生の言葉が映像に変わっていく不思議な感覚に引き込まれます。

たった一人の作家さんから生まれる、年代も性別もばらばらの心の中を楽しめる作品です。



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あらすじ

小さな幸福

恋人と過ごした、どんな時間が一番心に残ってる?
デートと言ってもひとそれぞれ。
中学生だった頃の帰り道、地味なパートナーとの淡々としたひととき、年上の女性を追っていったギリシャ旅行・・・・
ていねいに紡ぎだされた12の恋模様。

読者百人のアンケートによる「最も好きなデート」の実態も収録した短編集。

※巻末より

『小さな幸福』考察

長谷川カヤノ

部屋
平凡な恋。
この恋はなんだろうと悩むカヤノ目線。

【考察】
なんとなく始まった恋。
居心地はいいけれど、ハラハラドキドキすることはない。
これが恋と言えるのか?と悩む気持ちはすごくわかります。
淡々とした日常。
いま手の中にあるこの平穏が果たして正しいことだろうか?と。
手放すこともできず、満足することもできない女ごころを経験したことがある人は多いのではないでしょうか。

田口さとみ

ドーナツ
カヤノの友人「田口さとみ」の印象に残ったデート。

【考察】
叶わない、叶わなかった恋に起きた、たった一度の出来事。
多くの恋愛よりも心に残った気持ちがつづられています。
叶うはずがない。ただ思うだけでいい。
そんな感情こそ心に残り、思い出として色あせない。

田口寿史

地図
田口さとみの夫・田口寿史の思い出。

【考察】
中学時代の淡い思い出。
実際にデートした当日よりも、デートを成功させたい気持ち。
デートまでの日々が印象に残っているこのお話もリアルだなと思いました。

山内比佐子

田口寿史の部下・山内比佐子

【考察】
意識しているわけではないのに、考えてしまう上司のこと。
不倫をするつもりもなければ、恋と呼べるほどのものでもない感情。
これって不思議な気持ちですよね。

村松まりん

山内比佐子の姪・村松まりん

【考察】
5歳の女の子の楽しいことはかわいらしいです。
とても純粋で、ストレート。
こういう気持ちを忘れたくないなぁと思えるエピソードです。

村松泰子

村松まりんの祖母・村松泰子

【考察】
どうしてこの夫と結婚したのだろう。
熟年と言える夫婦の隠された過去。
この人と結婚した理由。
それを思い出させてくれた孫まりんの言葉。
一度、過去の恋人だった頃の夫のことを思い出してみるのもいいものだなと思いました。

萩原香

住宅街
村松泰子が通うジムのトレーナー萩原香

【考察】
「史上最低のデート」について考える。
それは父親との思い出だった。
父親と二人で出かけるのは大人に近づけば近づくほど、ぎくしゃくしてしまう。
そんな思春期に取ってしまった父親への冷たい態度を反省している人も多いと思います。

宗方由男

萩原香のジムの会員・宗方由男

【考察】
ただただ体の相性が良かった相手。
そのためには外国への遠距離も物ともせずに何度も足を運ぶ。
男の人のこの感情は私は理解できないですが、男の人なら心当たりがあるのでしょうか。
この日々の情熱は忘れることはできないだろうなと思いました。

高野京子

宗方由男が通うレストランのアルバイト・高野京子

【考察】
「これが人生の頂点かもしれない」と思った一瞬について思いをはせる。
それが不倫の恋でも。
人にはたくさんの思い出があり、忘れられない瞬間があるんだな。と思いました。
不倫は責められることも多いのは承知ですが、当人同士しかわからない思いもあるんだなと感じられるエピソードです。

宮林亜紀

うどん
高野京子のアルバイト仲間・宮林亜紀と兄・宮林耕太

【考察】
宮林耕太は長谷川カヤノの彼。
カヤノが平凡だと感じている恋を恋人の宮林耕太はどう思っているのか。
男の人はロマンチックだな。と感じるエピソードです。
決してロマンチックな感情を持っているわけではないのですが、素敵な考え方で私は好きでした。

長谷川カヤノ

宮林耕太の恋人・長谷川カヤノ

【考察】
「10円を拾ったような恋」と言われ思い出した幼少期の記憶。
たかが10円。されど10円。
それがどんなに大事なものかを知っているカヤノはいい女性だなと思いました。

あなた

たった3行のエピソード。
ここまで読み終わったら、記憶に残っている出来事を思い出します。
それが12話目の恋。
主人公は「あなた」

百人のカヤノたち

koibito
「あなたの場合、恋人と過ごしたどんな時間が心に残っている?」

あるイベントの最後に花火が上がった時、携帯電話に彼から「花火が上がってますな」とメールが。
同じ時間に同じ花火を観ていたことが、約束をして会うことよりも嬉しかった(30歳・未婚・会社員)

読者から寄せられた100のエピソードが収録されています。
私が心に残ったものを書き出してみました。

感想ツイート

「やっぱ角田光代すきだと思った。」と言われています。

「読んでにやけます。」と言われています。

「さらっと読めて和みます」と言われています。

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感想・まとめ

数珠つなぎでつながっていく様子がよかったです。
ふとした問いかけに答えたことで思い出された感情。
それをまた、誰かに聞いてみたいという気持ちはすごくよくわかります。
聞くのも話すのもいいですよね。
それによって自分の気持ちを再確認できたり、また誰かに連絡してみようと思えたり。
そんなきっかけになるかもしれないいいお話でした。
角田光代先生が描く、何気ない日常は心の琴線にうまく触れてくる。
さすがだなと思わざるを得ない一冊です。

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