「残花繚乱」岡部えつ著
久々に読んだ不倫小説。
なぜ、この本を買っていたのかあまり覚えていません。
買ったとき、何を思っていたのかどんな心境だったのか・・・。
私はあまり前情報をもって小説を選びません。
その時の本屋さんでの直観というか、面白そうだな。という感覚で選びます。
題名も大事だなってすごく感じますし、表紙で選ぶこともあります。
小説のジャケ買いです(笑)
そもそもが大手出版社が「単行本」として精査して出版しているのだから、そんなに「ハズレ」に出会わない。という感覚です。
5人のおんなを描く群像劇でしたが、やっぱり、面白かった。
一章ごとに、違うそれぞれの視点から見た「おんな」。
それぞれの女の生き方。
よくある不倫の代償とはかけ離れている内容で、あまり現実味はありません。
それでも読ませてしまうのは作者の文章力なのかな。と思います。
私は映画は見ていないのですが、話題になった映画、「嘘を愛する女」の著者だったことがわかると納得です。
「おんな」を描くにしては女性に対して辛辣な部分も多く、岡部えつさんについても調べてみました。
「残花繚乱」あらすじ
西田りかは、上司の柏木荘太に惹かれ、不倫関係になった。
それを知った荘太の妻、美津子はりかに接近し、見合いを持ち掛ける。
相手にい選んだのは一人娘の美羽が兄と慕い、家族ぐるみの付き合いをしている落合圭一だった。
が、思惑は一人歩きをはじめ、それぞれの思いは変化し、その先には予想もしない展開が・・・。
愛憎、嫉妬、プライド。
女たちの内面を艶やかにリアルに描く、傑作情愛群像。
(裏表紙参照)
主な登場人物
- 西田りか
- 柏木荘太
- 柏木美津子
- 落合圭一
- 柏木美羽
- 桐谷麻紀
- 滝本泉
- 江崎龍子
憧れの上司・柏木荘太と不倫。
美津子にすすめられ、落合圭一と見合いし、婚約。
美津子の夫。
りかの不倫相手。
荘太の勤める会社の社長令嬢。
荘太とりかの不倫を知っている。
荘太の親友の弟。
兄を亡くして以来、荘太を兄のように慕っている。
美津子への恋心を隠している。
荘太と美津子の一人娘。
圭一を兄のように慕う。
インテリアコーディネーター
りかとは書道教室で知り合う。
独身主義の恋多き女性。
書道教室の友人。
夫がいるが仲は冷え切っている。
書道教室の先生。
生涯独身を貫いている。
目次と章あらすじ
⑴ばんざい
「西田りか」
不倫相手の妻、美津子からの紹介され、落合圭一と婚約したが荘太のあっさりした態度に戸惑いを隠せない。
⑵化生
「桐谷麻紀」
りかの婚約者と知りながら、落合圭一を誘惑し、関係を持つ。
⑶怨恨式
「柏木美津子」
結婚式当日。
夫、荘太の口から圭一の思いを聞かされる。
⑷一七歳
「柏木美羽」
親の前では何も知らないふりをしているが、美津子がりかと荘太の不倫を知ったうえで圭一を紹介したことを知っている。
⑸二人
「滝本泉」
リカの結婚式当日、柏木夫妻に違和感を持つ。
しかし、自分と夫との関係も似たようなものだと感じる。
麻紀から圭一との関係を打ち明けられる。
⑹散花
「江崎龍子」
龍子のギャラリーオープン当日。
パフォーマンス中に美羽を見かけ、急遽「華」から「散」に描く文字を変更する。
両親の期待を裏切り上京し、婚約者を捨てた過去を持つ。
⑺パートナー
「西田りか」
圭一の横に並びながら荘太との激しい情愛に思いをはせる。
これから圭一と共に生きていくことへの安心のようなものも感じ始める。
⑻乳房
「桐谷麻紀」
結婚式の数日後、圭一と出会ったバーで再会。
それがきっかけで、りかへ圭一との関係をメールで告白する。
⑼美しい玉
「滝本泉」
父親の痴呆が進行し、今まで仲睦まじい両親だと信じていた絆ですらもろかったことを知り、結婚について疑問を持つ。
⑽曲がり角
「桐谷麻紀」
書道教室を辞めようとした日に龍子に勧められ、個展を開くことになる。
辞めるどころか、龍子の門下生となり、さらに一人で生きていく決意をする。
⑾大人のルール
「西田りか」
美羽を呼び出し、荘太とは不倫関係ではなかったと言い張る。
圭一との子供を妊娠していることを美羽に告げる。
⑿一八歳
「柏木美羽」
年上の既婚者に言い寄られ、流されそうになった時、妻が現れる。
その時の男の態度に結婚というものを考えさせられることになる。
⒀バースデー
「柏木夫妻・落合夫婦」
両家がそろい、美羽の誕生パーティーをする。
美羽はりかと荘太の不倫の証拠をBBQの火の中へ入れ、燃やす。
⒁残花繚乱
麻紀と荘太の不倫が始まるがお互いに割り切った関係を望み満足している。
泉は夫との離婚を決意する。
美羽は美津子に歩み寄る姿勢を見せる。
りかと圭一は生まれてくる子供を楽しみに穏やかな日々を送っている。
著者「岡部えつ」先生について
5人の女性の視点から描かれていた「残花繚乱」
5人それぞれに個性もイメージも違う。
これが一人の人間が描けるのか、ということに驚きました。
そこで、著者「岡部えつ」について調べました。
プロフィール
1964年12月21日
大阪府豊中市生まれ群馬県前橋市育ち
44歳で小説家デビュー
著書には
- 枯骨の恋
- 新宿遊女奇譚
- 生き直し
- 残花繚乱
- パパ
- フリー!
- 嘘を愛する女
などがあります。
意外だったのはホラー作品もいくつかあることでした。
そして長澤まさみさん主演の映画「嘘を愛する女」の原作者。
映画「嘘を愛する女」公式HP(https://www.toho.co.jp/movie/lineup/usoai-movie)
私は残念ながら、この映画を観ていないのですが、センスのいい広告画像にいは覚えがありました。
岡部えつ原作なら観てみたいなと思うようになりました。
公式のHPは見当たらなかったのですが、岡部えつ先生がエッセイを書かれている「note」がありました。
岡部えつnote(https://note.com/etsuokabe)
その中の文章で、なぜ私が岡部えつの文章に惹かれたのかヒントがあったので抜粋します。
わたしは、東日本大震災のあとでやたら押しつけられた「絆」が大嫌いだったし、今またそれを持ち出されたら、耳も目も塞ぐ。
友達がしんどいことになったら、励ます、手を差し伸べる、気にする。そんな、誰もが子供の頃から当たり前にしていることを、スローガンに掲げたり美談に仕立てて披露したりするから、アレルギー反応が起きるのだ。
気にかけるというのは、縛り合うことでももたれ合うことでもない。
「自分がピンチのときに絶対連絡してこないのが友達で、すぐ助けを求めてくるのは知り合い」と言ったのは中島らもだった。これを読んだとき、どれだけ「ほんっと、そう!」とスカッとしたことか。
このB面には「ピンチのときにそばにいてくれるのが友達で、威勢のいいときだけ寄ってくるのは知り合い」があると思う。ピンチのときこそ、あらわになることがあるのだ。
この考え方に共感したし、私も同じ思いがあったので、「そうだよね。」とうれしい気持ちになりました。
他にもいくつかエッセイを書かれているのでお時間のある時にでもぜひ。
残花繚乱を読んだ印象として、先生は「結婚しているのか?」と感じて、調べたのですがそのような発表はありませんでした。
エッセイの中にも「夫」や「子供」と言ったような家庭をにおわせるようなものはなく、どちらかというと「孤独」という文字の方が多かったので、もしかしたら独身なのかもしれません。
本を読んだ印象としては、そちらの方がしっくりきます。
私も独身なのですが、既婚者特有のしっとり感が文章から感じられなかったからです。
「美津子」や「りか」の感情がどこか他人ぽいな。と。
これは私の憶測なので、もし違っていたらすみません。
【レタスクラブ】では最新刊の連載ページがありました。
https://www.lettuceclub.net/news/serial/11559/
無料で読めるのでぜひ。
感想ツイート
展開にメリハリのある面白い物語になっています。と言われています。
#読了 岡部えつ「残花繚乱」(個人的評価A)
とてもドロドロしていて怖ささえ感じる
ことがありましたが人物造形がきちんと
確立されているので展開にメリハリのある
面白い物語になっています☀️
女性目線だとまた違う感想かもしれませんが😅
最後の各人の収まり方も良かったと思います。#読書 pic.twitter.com/K1xXtJOMpn— Moonstone, The (@Kohsg23) June 17, 2021
章ごとの幕引きも、とても印象的。と言われています。
岡部えつ「残花繚乱」読了。ストーリー、キャラクター、様々な描写の一つ一つが琴線に触れてくる。章ごとの幕引きも、とても印象的。立体感を感じる。好き。 #読書忘備録2019 pic.twitter.com/V4Xq5a9nXV
— JIN+music (@jin_harada) August 2, 2019
笑顔の下にひた隠しにする男も怖いよ!と言われています。
残花繚乱 岡部えつ
見栄と意地、背徳と悪意を隠し持って複雑に絡み合う男女のゆくえ。余り感情移入できる登場人物が居なかったけど、怖いもの見たさで読んでしまう(笑)
女同士って怖い!けど、笑顔の下にひた隠しにする男も怖いよ! pic.twitter.com/RCLknUFPkH— ろこな (@rocona62) January 14, 2015
感想まとめ
この本との出会いで岡部えつという小説家を知れてよかったと思いました。
他の本も読んでみたい。
残花繚乱の感想を一言で表すと「荘太がサイテー」です。
人間味が全く感じ取れない。
女性作家に多いのですが、やはり男性心理はあまり描かれていません。
なので、女性側から感じる印象としてそうなってしまいます。
落合圭一がいい奴かと言われるとそうでもなく。
なんていうか、男性に心はないのか?と言う感じでした。
わざとそんな風に描かれて、「おんな」を浮かび上がらせているのかもしれませんが。
そうだとしたらさすが!だと思います。
美羽から龍子まで年齢が様々な「おんな」を青臭い少女から熟成された女性まで全員がそれぞれ違う人格で描く群像劇を書くというのはどんな感じなのか不思議です。
小説家っていろんな人になれる頭の中はどうなっているんだろう。
どうやっていろんな人の人生や思考を考えるのだろう。
本当の自分がわからなくなったりしないのかな?とかいろいろ考えてしまいました。
1章ごとに話が変わるので隙間時間に読めるのもよかったです。
お時間のある時にでも手に取っていただけると幸いです。
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